東京二期会オペラ劇場『ルル』振付・出演
〈8月28日開演!東京二期会オペラ劇場『ルル』〉 今週末、ついに『ルル』開幕です。 私はルルの魂、Seeleとして出演致します。作中の歌手の皆さまの動きについても振付・サポートしています。 歌手の方々が織り成す世界を、様々な角度から見つめています。 蠢く力があって、どうしても血の味がする。ABキャストどちらも目が離せない引力があります。 演出のカロリーネ・グルーバーさんはよく「絵をつくる・絵を見たい」と仰っていて、その徹底的に貫かれた知性・そこに安住しないヴィジュアルセンスに、打ちのめされる日々です。カロリーネさんとお話した後に戯曲を読み直すと合点がいき過ぎて、恐ろしい。 比べるのも恐れ多いけれど、例えば私はやはり「舞台に立つ人の身体、または半径1m以内」の出来事が創作の出発点だけれど、カロリーネさんは「劇場空間・美術・衣装・文脈」外から攻めていって同時に出演者に「あなたはどう思う?」と辛抱強く聞き続け内側からも触手を伸ばす。スケールの大きさを感じて、学んでいます。
『ルル』の物語には直接書かれていない、歌われていない「ルルの心」を表現することが私の重大任務です。行間を読み続け、ルルと自分を重ねたり、離れて眺めたりしながら“居方”を探る作業は、正直に言って、物凄くしんどい!!!消耗・消費・削られる感覚が拭えなかったです。アシスタントの岡崎彩音ちゃんのサポートがなければ早々に音を上げていたに違いない…。私は、思いっきり発散すること・工夫して面白く魅せることをどうしても目指してしまう思考回路なので、歌手の皆さんの稽古の陰で、もぞもぞトライ&エラーを繰り返していました。暗闇で身体を壁に打ち続けるような「あ、これは行き止まりなんだ、お、ここは通り道なんだ」と探す作業を経てようやく築いた細い道を、今もよろよろキワキワを歩いてます。
いくつか発見がありました。 ①屈辱からの発見 私自身、女性を主人公にしたダンス作品をこれまでいくつか創ってきました。『ジゼル』も『顔』(松本清張著)もそう。女性の生き様から表現を生み出すのは好き、なのに、ルルは違う。私が取り上げて創り上げてきたのは「自分がしっかりある」「凛としている」女性たちでした。 そのことにハッキリ気づいた時がありました。 あらすじを読んでも分かる通り、かなり過酷な状況を幼少から今も過ごしていると思われるルル。〈怯える〉身体表現がよく出てくるのですが、稽古で初めて動いてやってみた時、全身に〈屈辱〉を感じました。私自身の〈怯えている身体・様子〉を晒すことが嫌、稽古場でそれを出演者やスタッフの皆さんに見られている可能性にすら嫌悪感がありました。(実際は皆さん自分のお仕事が猛烈に忙しくて私を見てる暇なんてないのですが…状況として。)一瞬の凄まじい嫌悪感の後、「あぁ、私はこういう表現を選んでこなかったんだな。無意識だったな。私が選ばない所にルルはいるんだな。」と大発見がありました。「じゃあ〈ルルの心〉はどうしたいのだろう?」と、旅が始まった気がします。
②唐突に声を響かせるルル 「音楽は学問でもあるんだ」と今年はとても学んでいるので不用意に言うのはおこがましいし、きっと何か理論と要素があると思うのですが、『ルル』の音楽を聴いていると「ルル、何故その歌詞をそんなにいきなり声を響かせて歌う?」と感じる箇所がいくつかあります。今のところ辿りついた納得は「ルルにとって声が盾なんだ」ということ。
芸術のエキスパートに囲まれ、ご一緒できる喜びと感謝を実感しています。 どうか最後まで作品をお届けできるよう、日々取り組んでいきます。
東京二期会オペラ劇場 『ルル』〈新制作〉 オペラ全2幕 日本語および英語字幕付き原語(ドイツ語)上演 原作:フランク・ヴェーデキント(戯曲『地霊』および『パンドラの箱』) 台本・作曲:アルバン・ベルク
会場:新宿文化センター 大ホール (東京メトロ副都心線・都営大江戸線「東新宿駅」A3出口直結の新宿イーストサイドスクエアを出てすぐ) 公演日: 2021年8月 28日(土) 17:00 29日(日) 14:00 31日(火) 14:00
開場は開演の60分前 上演予定時間:約2時間30分(休憩を含む) ※正式な上演時間は開幕前日に当サイトトップページ「What's New」に掲載いたします。 http://www.nikikai.net/lineup/lulu2020/index.html
指揮:マキシム・パスカル 演出:カロリーネ・グルーバー
装置:ロイ・スパーン 衣裳:メヒトヒルト・ザイペル 照明:喜多村 貴 映像:上田大樹 振付:中村 蓉 演出助手:太田麻衣子
舞台監督:村田健輔 公演監督:佐々木典子
ルル: 森谷真理(8/28・31)、冨平安希子(8/29) ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:増田弥生(8/28・31)、川合ひとみ(8/29) 劇場の衣裳係、ギムナジウムの学生:郷家暁子(8/28・31)、杉山由紀(8/29) 医事顧問:加賀清孝(全日) 画家:高野二郎(8/28・31)、大川信之(8/29) シェーン博士:加耒徹(8/28・31)、小森輝彦(8/29) アルヴァ:前川健生(8/28・31)、山本耕平(8/29) シゴルヒ:山下浩司(8/28・31)、狩野賢一(8/29) 猛獣使い、力業師:北川辰彦(8/28・31)、小林啓倫(8/29) 公爵、従僕:高田正人(8/28・31)、高柳 圭(8/29) 劇場支配人:畠山 茂(8/28・31)、倉本晋児(8/29) ソロダンサー:中村 蓉(全日)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
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