ナショナルシアターウェールズレジデンスプログラムWalesLab参加
National Theater Wales residency program
Waleslab project "Cymru and I"「カムリとわたし」
HIRAETHヒライス、ウェールズの言葉で〈望郷〉を意味します。
故郷ウェールズの景色を、いつまでも心の中にとどめておこう、という言葉です。
ウェールズの美しい景色を目の当たりにしたら、そう思わずにはいられなでしょう。
ですが、その美しさの裏には、イングランドの支配下に置かれ、薄れていく文化をどうにか守り抜こうとしてきた歴史があります。
それは「ウェールズ」という名前にもあらわれています。
現在ウェールズは、英語でウェールズ、ウェールズ語でカムリと呼ばれています。
ブリテン島を支配したアングロ・サクソン人からは、英語で“外国人”を示す「ウェールズ」と呼ばれ、
逃げのびたケルト人の彼らは、自らのことをウェールズ語で“同胞”を示す「カムリ」と言ったのです。
心に故郷の大切な景色を持つもの同士が、お互いをカムリと呼び、暮らしてきました。
今回私は、この土地で暮らす人々に「一番大切な思い出の場所・風景」をたずねて歩こうと思っています。
もちろん、ほっかむりとサングラスといういつものユニホームで。
ウェールズの人々の心に眠る、とっておきの思い出の箱をのぞかせてほしい。
これまで私は作品の中で「思い出」や「誰かを想うこと」について触れてきました。小説や映画、自分の思い出から踊りへと広がっていくことが多いのですが、今回はこの旅で、ウェールズで暮らす人々の人生から刺激を受けたいと思っています。
そしてあわよくば、お話を聞かせてくれた人たちが、思い出に積もっていた埃をはらって、また明日から新しい日々を送ってくれたらなと思うのです。
この過程のすべてをカメラにおさめドキュメンタリーとして残すとともに、話して下さった“物語=思い出”とゆっくり向き合い、短編集のようなダンス作品として実を結べたらと考えています。
美しい景色とその場所に込められた思い出を共有できたなら、わたしも“カムリ”になれるのかしら。
滞在期間 2014年8月15日〜27日ウェールズ、のち9月1日までロンドン
Thank you for the wonderful chance, National Theater Wales.
2014.09.06・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無事、WalesLab終了しイギリスより戻ってまいりました。
視野が広がる、というより壊れるような経験でした。
Cardiff→Aberystwyth→Cardiff→London
の18日間。
特にAberystwyth→Cardiffは、寝食トイレ忘れるほど必死で夢中でした。
こんなにもたくさんの人達に会えるとは思っていませんでした。
今 思い出すのは海風と人とカモメです。
今まで作品の中で「大切な瞬間を思い出してほしい」「その思い出がいつか貴方を救ってくれますように」という想いを込めてきました。
その想いを、舞台から飛び出して直接アピールしてみるチャレンジでした。
声をかけなければ通りすがりの他人同士であるあの人に、こんなにたくさんの物語があるなんて。
生の力強い思い出に触れることは、舞台の上とは違う重い責任が伴います。
そんな 一人一人思い出を持った人々と、私は舞台の時間を共有しようとしているのだと、改めて実感です。
今回はさまざまな条件に恵まれ、恐ろしいほど無邪気に、Aberystwythを駆け抜けました。
人が街を創るというのは間違いありません。
Aberystwythが微笑んでくれたらなと思っていました。
今後も舞台を飛び出したプロジェクトを考え、やっていきたいと考えています。
映像作家ホルヘ、プロジェクトから生活まで面倒見てくださった京子さん、そして創作活動の種を育てる時間を こんなに丁寧に提供し支えてくれたNational Theatre Walesの皆さまに深く感謝です。
WalesLab "Cymru and I"
Yo Nakamura
Jorge Lizalde
Kyoko Iwaki
Thanks to NTW