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『√オーランドー』終演!

先日、芸劇danceワークショップ『√オーランドー』を終えました。

ご覧くださった皆さま、年の瀬に時間をつくってお越しくださりありがとうございます。


この作品は多彩な経験を持つ出演者の皆さんの、興味と思考から、出来上がっていきました。

「7日間の昏睡は、その時の意識レベルにもよるけれど、体勢が変わらないことで血栓が出来てしまうのが怖い。だから7日間の看護が必要。」

という、看護師さんの提案。

「オーランドーの行動パターンは非合理的。浪費としか言えない衝動的行動もある。オーランドーの目的関数は、文学を極めること・文学を愛すること。才能ある作家に対してまたは創作活動への寄付や投資をおすすめする。」

という、経済学者さんの意見。

などなど、一人で読んでいるだけでは見つからない、驚きの切り口が満載でした。

チアダンス・チアリーディングのリーダーシップ、日本舞踊の見立ての美についてなど、この機会に得た学びは豊かでした。

「インク壺が私を呼んでいるの。インクが"詩になりたい"って私に言うのよ。大丈夫じゃないけど大丈夫。」結婚した後も詩を書きまくるオーランドーの決意や気持ちを、シナリオライターとして活躍されている出演者の吉村さんがご自身と重ねて考え出してくださったこの台詞、沁みました。


三村一貴さんに言語研究の視点から読み解いていただき導き出された「樫の木の不変性」と「高砂の松との共通点」は、最後に全員で踊った音楽、Eternal Dance(高砂「千秋楽」現代音楽リミックス)へと発展していきました。

このEternal Danceは出演者のお一人で作曲家の廣庭賢里さんが創り、出演者が歌い、芸劇の稽古場で録音して生み出されました!

現代美術家浅野ひかりさんの着眼点は流石、視覚的かつ、体験体感出来る面白さがありました。風を吹き込まれるような刺激!


専門知識だけでなく『オーランドー』に描かれる「民族や文化ごとの価値観の違い」を発端に、意見を出し合い創った場面もありました。「卵焼きの味付けの好み」から考え始めて「他人と共に生きること」という大きな問いに悶える…原作を読んだ時に感じた切なさが、私事のリアリティをともなって迫ってくるシーンになりました。普段、俳優さんとして活躍するお二人だからこそ成し得た、身体と言葉のバランスでした。


ちゃっかり私も踊りました。「結婚」が変化の象徴として描かれる、という共通点から、小津安二郎さんの映画『晩春』の台詞音源と共に。小津映画をもとに踊りを創るのは、ソロ『別れの詩』から10年振り。10年の間に得た沢山の経験に想いを馳せつつ、自分の中の未だ全く変わらない部分を妙に意識する、静かにスリリングなひとときでした。

稽古が進むにつれて「専門的な知識や技術の有無に関わらず、何食わぬ顔で一緒に踊っている仲間も大概、頭の中ではとんでもない事を考えていたりする。突拍子もない動きをする。」ということが分かりました。人は皆、何かのスペシャリストなのかもしれません。


約3週間の創作と本番、濃密な日々でした。

本番初日はハプニングがあり、ご覧くださった方々には申し訳ない気持ちでいっぱいになりましたが、お客様の温かさに救われました。

2日目の前に丁寧にブラッシュアップとギアチェンジして、千秋楽まで進化し続けました。

その全ての行程を常に楽しんでくれたメンバーに尊敬と感謝の想いが尽きません。


クリエーションワークショップは過程が面白い!と常々感じていたので、緒方彩乃さんのおかげで、充実のロビー展示やSNSにて余すことなくお披露目できて嬉しかったです。稽古にダンサーとして参加しつつ、アーカイブの作成、そして舞台美術の樹も(芸劇の廃材を主に使用!)創り出す!彩乃ちゃんの驚愕の大活躍、大感謝です!

映像・ドラマトゥルクの中瀬俊介さんとのやり取りは、創作欲を駆り立てます。多分野に渡る多様な切り口で作品を紐解く今回の挑戦。中瀬さんの多彩な知識と幅広い興味に、改めて驚かされましたし、その知識の湖で泳がせてもらった心地よさもあります。

献身的に支えてくれたアシスタントチームの力も大きいです。出演者全員が揃う時間が少なくても、安定して稽古を進められたのは、パワフルかつ個性的なアシスタントの方々のおかげ!

アフタートークのゲスト、AKI INOMATAさんは舞台稽古もゲネプロも見守ってくださいました!想定外を楽しみながら、誰かと何かと共に創作していくこと。それは、私がここ数年目指している創作の在り方なので、INOMATAさんの言葉がビリビリ響きました。

そしてこの大冒険、機会をくださった東京芸術劇場の皆さまに感謝です。行き届いた丁寧なスタッフワークで魅せてくださったテクニカルチームの方々、共にワクワクしながら進めてくださった制作の皆さま、本当にありがとうございます。


また、新しい冒険へ!


〈芸劇danceワークショップ2023発表公演〉

『√オーランドー 』身体的冒険と三百年の遊び


原作『オーランドー』の主人公は360年以上生きて、途中で男性から女性に変わります。時代も性別も越えた物語を進行するのは「伝記作家」と名乗る人物。主人公よりお喋りで、出来事の描写の合間に自分の意見をどんどん発言していきます。この伝記作家よろしく、『オーランドー』の読解をきっかけに生まれた「私たちの思考」を「身体で表してみる」というのが『√オーランドー』の挑戦です。参加者の皆さんは、踊って考えて喋って…また踊って考えて…辛抱強く思考と身体の往来に取り組んでくださいました。

私はいつも作品創作の最中に出会う分野を越えた「新しい知識・深い考察・意外な繋がり」が愛おしくてたまりません。そんな発見にときめくたび「私にとって、ダンス作品は世界を覗き込む窓だ!」と実感しています。この約3週間のワークショップが、様々な経歴を持つ参加者の皆さんにとって「これまでの人生で培われた経験や知識が、新しく身体と出会って刺激的!」と思える時間で満ちていることを願っています。私には、皆さんが眩しすぎてクラクラするほど愉快な日々でした。ありがとうございます!

創作の斬新な切り口を得るためご協力くださった他分野にわたるスペシャリストの方々、作品を丁寧かつダイナミックに盛り上げてくださったスタッフの皆さん、最大の優しさと才能と愛で支えてくれたアーカイブチーム・アシスタントチームのみんな、大冒険のこの企画を受け入れてくださった劇場の皆さま、本当にありがとうございます。感謝を伝えたい方々の名前を並べたら、原作の序文に書かれているような長いリストになってしまいます。ですので、この辺りで終わらせていただきます。

『オーランドー』がもたらしてくれたご縁に感謝しています。

中村蓉


【原案】ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』

【講師・構成・振付】中村蓉

【出演】芸劇danceワークショップ2023『√オーランドー』参加者

秋山舜稀 内田颯太 川島信義 佐藤正宗 中野亜美 中野利香 中森千賀 幡野智子 廣庭賢里 巻島みのり 森口ありあ 大和奈月 山本結 吉村元希 律子 / 中村蓉

【スペシャリスト】

浅野ひかり(現代美術)

三村一貴(中国語中国文学)ほか

※各専門分野の視点から作品創作にご協力をいただく方々

【会場】

東京芸術劇場シアターイースト

【日時】

2023年12月22-24日

アフタートーク:現代美術家AKI INOMATAさん×中村蓉

【スタッフ】

映像・ドラマトゥルク:中瀬俊介

アーカイブ作成・演出振付アシスタント:緒方彩乃

ワークショップアシスタント:アラキミユ 佐藤あかり 諏訪由季 宮澤ひかる

舞台技術:東京芸術劇場舞台技術スタッフ

宣伝美術:関田浩平

【詳細】

【充実のアーカイブ!√オーランドー公式X】






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